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わたしはあなたのお母さんじゃありません

わたしの休日は朝起きて、まず洗濯機をまわすところから始まる。

 

 

 

ゴミの日なら寝ぼけ眼のまま、上着を羽織って玄関に夜のうちに用意しておいたゴミ袋を持って収集場まで出しに。


部屋に戻ってきたら上着をいすにかけてうでまくりをして、昨晩同居人が使ったお皿やマグカップ(流しにおいてある、汚れが乾いてかぴかぴ)を水につける。それからようやく顔を洗って歯を磨く。

 

目が覚めてきたら、皿洗いの続きをして、最近ハマっている甘酒の豆乳割りを作るためにコンロの鍋に豆乳を注いで火をかける。(急いでいるときはレンジで作るときも)
寝ている同居人を起こさないように、できるだけ音を立てないよう注意しながら、出来上がった甘酒の豆乳割りを部屋に運んでホッとひと息つく。

 

今日はなにをしようかな、と考えていると、そろそろ無くなりそうだったトイレットペーパーと洗剤の買い出しを思い出す。そうだ、近くのドラッグストアに行こう。

 

そうこうしているうちに、洗濯機から呼び出しがかかって、冷たい洗濯物をカゴに移し替える。いすにかけっぱなしだった上着をとり、もう一度羽織ってからベランダに洗濯物を運ぶ。おととい干した洗濯物は、昨日帰ってすぐに取り込んでおいたから、物干しにそのまま干せる。洗濯物は、しわにならないようにシャツやタオルは何度かぱんぱんとシワをのばしてから干すのがコツだけど、寒い時期はベランダで手がかじかむからいつもよりちょっとだけ手を抜いてやっている。

 

洗濯物を干し終わるころには、すっかりマグカップは冷めていて、ぬるいと言えない温度の中身をそのまま飲みきってからすぐに洗ってふきんで拭き上げる。10年前に友達にもらったお気に入りのマグカップだから手入れも面倒じゃない。目に入った蛇口の水垢を見て見ぬふりができず、メラミンスポンジで磨き上げていたらいつの間にか昼も近い時間になった。今日は何を作ろうかな。

 

冷蔵庫と相談しながら、豚肉ときのこをフライパンで炒めて塩コショウで味付けしたものと、みりんと酒としょうゆで煮たかぼちゃと、味噌汁を作った。狭いダイニングテーブルに並べてさあいただきます、と言ったところで同居人が部屋から出てくる。おはようと声をかけて小さな返事があると、同居人がはそのままトイレに入る。片手にスマホがあったから、きっと5分は出てこないだろう。

 

ご飯をゆっくり食べていると、同居人が「俺も食べる」とひとこと。「どうぞ」と返事をする。もう少し味付けは薄くても良かったかもな、と思いつつ昼ごはんを食べきったお皿を流しに戻そうとすると「まだ?」と聞かれる。はあ、とため息をつきたくなりながら「味噌汁はお鍋にあるから、自分でよそってね」と返す。むすっとしながら彼は冷蔵庫に入ったゼリーを取り出して食べ始めた。そこにある味噌汁をよそうことすら面倒なのかと呆れるが、彼は黙っていたら盛り付けられたご飯が出てくると思っているのだろう。どうせそのゼリーに使ったスプーンも流しに置きっ放しにして、わたしが洗うことになる。一緒に住み始めてから今日まで、何度、わたしはあなたの母親じゃないよ、と思ったことか。一度だけ口に出したら、面倒なことになったのでもう別の家で暮らせるようになる直前まで口に出すことはないだろうなと思う。

 


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2年同じ家で暮らしてようやく気がついた。わたしは家事が好きだ。できるだけ丁寧に、自分が気持ちよく過ごすためにきちんとやりたい。でも、好きなはずの家事は、同居人によっていつの間にかすごい量になっていて、いつからかやらされるものになっていた。

 

予想通り、彼に食べられたゼリーのゴミはテーブルに置きっ放し、スプーンも流しに投げ入れられた。慌ただしく着替えた彼は鞄をひっつかんで行ってきますとどこかへ出かけていった。きっと仕事だろう。確かめたことはないけど、どうやら大変らしい。出しっ放しになったゴミをゴミ箱に捨てて、スプーンを洗って部屋に戻って着替える。買い出しの前に、気になっていた本を探しに行こうかな。